Tピロリ菌について

ピロリ菌とは

発見

ピロリ菌は1983年にWarrenとMardhall ( Lancet 4:1273,1984 ) により胃の組織に存在することが報告された,0.5〜3umの大きさで1〜6本の鞭毛を有するGram陰性の螺旋状桿菌です.1997年に遺伝子配列が解明されました ( Nature 385:539,1997 ).

図 ピロリ菌

感染経路

経口感染が推定されていますが,それを裏付けるように,開発地上国では高く先進国では低い感染率が報告されています ( Epidemiol Res 13:42,1991 ).
日本での感染率でも下のグラフに示すように,40歳以上の悪い衛生環境で育った世代に高い感染率が認められます ( Gastoenterol 102:760,1992 ) .

図 年代別ピロリ菌抗体陽性率

また, 離乳食開始時の母親から乳児への口移しが感染の大きな要因との報告もあります(日本臨床 63:172,2005 ).成人が1年間に感染する率は約0.5%と報告されているので ( Gastroenterol 102:41,1992 ),成人になってからの新たな感染は低いと考えられ,今後わが国における感染率は低下することが予想されます.

ピロリ菌の性状

ピロリ菌は胃粘液中の尿素を分解してアンモニアを産生することによりピロリ菌周囲の胃酸を中和します.また,鞭毛による活発な運動能を有し,胃粘膜を被う粘液層や胃粘膜上皮細胞に接着します.

ピロリ菌の傷害機序

ピロリ菌による胃 粘膜の傷害機序として,ピロリ菌が産生するアンモニア,プロテアーゼやカタラーゼ等の酵素,空胞化毒素(VacA サイトトキシン)や,炎症反応を介したサイトカインが関与していると考えられています.

ピロリ菌と胃の疾患との関係について

胃炎

胃粘膜上皮細胞に接着したピロリ菌に対して炎症反応が起こり胃炎や潰瘍が発症すると考えられています.好中球の浸潤を認める慢性活動性胃炎ではピロリ菌の陽性率は88% と報告されています ( J Infec Dis 161:626,1990 ) が,実際,ピロリ菌の除菌により好中球を伴う炎症性細胞浸潤が改善することが報告されています ( 総合臨床 46:2534,1997 ).
一方,従来,萎縮性胃炎は加齢によるものと考えられていましたが,ピロリ菌の有無により同年代でも明らかに萎縮性胃炎の頻度が異なること ( Am J Gastroenterol 91:959,1996 ),prospective な検討でピロリ菌陽性者では高率に萎縮性胃炎の拡大を認めること ( Lancet 345:1525,1995 ) より,萎縮性胃炎にもピロリ菌が関与していると考えられます.

胃潰瘍

prospective な検討でピロリ菌陽性者は3.2倍のオッズ比で胃潰瘍を発症しやすいこと ( Ann Int Med 120:977,1994 ),除菌群では潰瘍の再発が抑えられること ( N Engl J Med 332:139,1995 ) より,ピロリ菌は胃潰瘍の重要な原因になっていると考えられています.

十二指腸潰瘍

prospective な検討でピロリ菌陽性者は4.0倍のオッズ比で十二指腸潰瘍を発症しやすいこと ( Ann Int Med 120:977,1994 ),除菌群では潰瘍の再発が抑えられること ( N Engl J Med 328:308,1993 ) より,ピロリ菌は十二指腸潰瘍の重要な原因になっていると考えられています.

胃癌

疫学的検討ではピロリ菌と胃癌は関連があると報告されています.

表 ピロリ菌感染症の胃癌発症のオッズ比

報告者 オッズ比
Forman 2.8
Parsonnet 3.6
Nomura 6.0

これより,WHOがピロリ菌をdefinitive carcinogen ( classT ) に指定しましたが,癌を発症させる詳細な機序は不明です.しかしながら,ピロリ菌と胃癌との関係を示唆する所見として, 早期癌の胃癌粘膜切除後の再発率が除菌により抑制されることが報告されています ( 胃癌粘膜切除後3年間の再発率が非除菌群では 9 % に対して除菌群では 0 % ).動物実験ではスナネズミにピロリ菌単独( Gastroenterology 115:642,1998 )および発癌物質との併用( Cancer Res 58:4255,1998 )で胃癌の発生することが確認されています . 最近,慢性のピロリ菌感染の修復のため動員された骨髄細胞が異常な細胞増殖をきたし癌を形成することがマウスで証明されました(Science 306:1568,2004).これがヒトでも証明されれば,胃癌は胃粘膜ではなく骨髄由来の細胞より発生することとなり,従来の考え方が一変する可能性があります. 最近,CagPAI陽性ピロリ菌の感染により刺激されたNFκBを介してAID(activation induced cytidine deaminase)と呼ばれる遺伝子編集酵素が胃上皮細胞に発現し,これにより遺伝子変異が生じて胃癌が発生するという分子レベルでの胃癌発生のメカニズムが明らかになりました(Nature medicine 13:470,2007).

胃MALTリンパ腫

胃原発性悪性リンパ腫の40-50%を占めますが,全悪性胃リンパ腫の3-8%,胃原発性悪性腫瘍の1-5%と,比較的まれな疾患です.胃MALTリンパ腫の50-90%は除菌により 寛解することが確認され,2010年6月にピロリ菌除菌の保険適応となりました.

Non-ulcer dyspepsia ( NUD )

NUDは症状により,胃食道逆流型,運動不全型,潰瘍症状型,非特異型の4つに分類されます.ピロリ菌との関係は不明ですが,ピロリ菌により胃排泄能はむしろ亢進するとする報告がみられます( Dig Dis Sci 24:1677,1989 ).また,潰瘍症状型ではピロリ菌の関与が示唆されています( Scand J Gastroenterol 31:1078,1996 ).

 

ピロリ菌と胃以外の疾患との関係について

血液疾患

特発性血小板減少性紫斑病 (ITP)

1998年にITPに対する除菌効果(Lancet 352:878,1998 )が報告されて以来,有効であるとの報告が蓄積されつつあります.ピロリ菌に対する抗体が血小板に対して自己抗体として作用する機序が想定されています.

鉄欠乏製貧血

ピロリ菌がlactoferrin結合蛋白を介して鉄を取り込む機序が想定されています( Infect Immun 61:2694,1993 ).

心・血管系疾患

冠動脈疾患

虚血性心疾患では対照者に比してピロリ菌に対する抗体の出現率が高い( 59% vs 39% : odds ratio=2.28 )と報告されました( Br Heart J 71:437,1994 ).その後,これを支持する報告( Circulation 97:1675,1998 )と,差がないとする 報告 ( Circulation 98:845,1998 )があり,決着はついていません.

皮膚疾患

酒さ性ざ瘡

酒さ性ざ瘡の84%に胃の組織よりピロリ菌が検出され,対照者である胃炎患者の45%に比べ有意に高率であったと報告されています( Am J Gastroenterol 89:1603,1994 ).

慢性蕁麻疹

除菌をした慢性蕁麻疹の91%に改善がみられたとの報告( Int Allergy Immunol 116:288,1999 )がありますが,ピロリ菌以外の細菌に対する効果であった可能性もあり今後の検討が必要と思われます.

炎症性腸疾患

Crohn病(13%)および潰瘍性大腸炎(18%)ではコントロール(43%)に比してピロリ菌の感染率が低いと報告されています( J Clin Pathl 49:65,1996 )が,その原因は明らかにされていません.

  ピロリ菌の診断について

細菌培養法

最も確実な診断法ですが微好気性のため培養は容易でなく,偽陰性の結果を生じる危険性も指摘されています ( Medical technology 17:21,1987 ).また,耐性菌の問題もあるので抗生物質に対する感受性を調べることは重要と思われます.

組織検鏡法

胃の組織を化学的に染色してピロリ菌を顕微鏡で探す方法で,HE染色,Giemsa染色,Warthin-Starry染色,acridine-orange染色,免疫染色などが行なわれています.

迅速ウレアーゼ試験

ピロリ菌が有するウレアーゼの活性を利用する検査方法です.試薬は尿素PH指示薬で構成され,ピロリ菌によって発生したアンモニアがアルカリ性であることを利用して指示薬の色の変化をみます.以上の方法は胃内視鏡検査による生検が必要ですが,採取場所として前庭部および体部の大弯の2箇所よりの生検が推奨されています.

図 迅速ウレアーゼ試験

フェノールレッド散布法

フェノールレッド色素を胃の中に散布することにより胃内のピロリ菌の分布をみるもので,原理は迅速ウレアーゼ試験と同じです.

尿素呼気試験

炭素を同位元素の13Cで標識した尿素を内服すると,ピロリ菌のウレアーゼにより標識二酸化炭素とアンモニアに分解されます.この標識二酸化炭素は消化管から血液を介して肺で呼気中に排出されます.この呼気中の標識二酸化炭素を測定することによりピロリ菌の存在が確認できます.ピロリ菌陽性者では摂取した尿素の50%が呼気から排泄されますが,陰性者では数%のみで,ほとんどが尿から排泄されます.

図 尿素呼気試験

抗体測定法

血中のピロリ菌に対する抗体を測定する方法が一般的ですが,便中および尿中の抗体を測定する方法も開発されています.抗体を使って便中のピロリ菌特異抗原を検出する方法(HpSA:Helicobacter pylori stool antigen)では,感受性94.1%,特異性91.8%と報告されています(Lancet 354:30,1999).

抗原測定法

便中のピロリ菌の抗原を直接測定する方法です.

DNA診断法

ピロリ菌のDNAを増幅する遺伝子診断法です.

診断方法の問題点

ガイドラインでは除菌の前後で上記のいずれか1方法を用いることになっています.除菌前は問題は少ないと思われますが,除菌後はサンプリングエラーによる偽陰性の可能性も考えられ,尿素呼気試験を使用することが望ましいと思われます.

 

ピロリ菌の治療ついて

 除菌の適応の変化

1990年にシドニーで開催された世界消化器病学会では再発性・出血性十二指腸潰瘍が除菌の対象となり, 1994年にはNIHがすべての胃潰瘍・十二指腸潰瘍を対象としました( JAMA 272:65,1994 ).1996年には欧州でマーストリヒト・コンセンサス・カンファレンスが開催され,実地医家向けのガイドラインが発表されました( GUT 41:8,1996 ) が,消化性潰瘍・MALToma・早期胃癌切除後・重症胃炎が除菌の対象とされましました.1997年にはアジア太平洋会議 ( J Gastroenterol Hepatol 13:1,1998 )でも胃潰瘍・十二指腸潰瘍に対する除菌療法が推奨されました.なお,日本ヘリコバクター学会は以下のような疾患を除菌の対象としていますが,保険の適応は胃潰瘍と十二指腸潰瘍だけです.

表 ピロリ菌除菌治療の適応疾患

1 胃潰瘍,十二指腸潰瘍 A*
2 胃MALTリンパ腫 A*
3 早期胃癌に対する内視鏡的粘膜切除術後胃 B**
4 萎縮性胃炎 B**

5

胃過形成ポリープ

B**

6

Non-ulcer dyspepsia

C***

7

Gastro-Esophageal Reflux Disease

C***

8

消化管以外の疾患****

C***

*A :除菌治療が勧められる疾患
**B     :除菌治療が望ましい疾患
***C  :除菌治療の意義が検討されている疾患
****C :特発性血小板減少性紫斑病,鉄欠乏性貧血,慢性蕁麻疹,レイノー現象,虚血性心疾患,偏頭痛,ギランバレー症候群など

 

  除菌法

PPI 使用以前のmeta-analysisによる検討では単剤で18.6%,2剤で48.2%,3剤で82.3%の除菌率が報告されています ( Am J Gastroenterol 87:1816,1992 ).
現在はPPIに抗菌剤2剤を併用する新3剤療法が主流ですが,十二指腸潰瘍に3剤併用を1週間行なうことにより,MACH-1 study ( Helicobacter 1:138,1996 ) では高い除菌率が,DU-MACH study ( Alimentary Pharmacology & Therapeutics 13:289,1999 ) では,高い除菌率と再発防止効果が得られることが認められました.国外の成績より,90%前後の除菌率が期待できます.

日本の現状

2000年11月1日にピロリ菌陽性の胃潰瘍と十二指腸潰瘍に除菌療法の保険が適用されました.承認された効能・効果は“胃潰瘍又は十二指腸潰瘍におけるヘリコバクター・ピロリ感染”で,用法・用量は次のとおりです(オメプラゾールの使用は2002年4月から認められるようになりましたが,オメプラゾールを使用した場合のクラリスロマイシンは800mgに固定されます.2007年1月よりラベプラゾールを用いた除菌も保険適応となりました ).2013年2月21日には,ヘリコバクターピロリ感染胃炎に対するピロリ菌除菌療法が保険適応となりました.

日本でのピロリ菌一次除菌療法

種類 1日量 期間
オメプラゾール / ラベプラゾール / ランソプラゾール 40 mg / 20mg / 60 mg ( x2 ) 1週間
アモキシシリン 1500 mg ( x2 ) 1週間
クラリスロマイシン 400-800mg  ( x2 ) 1週間

この治療により80-90%の除菌が期待できます.気になる副作用ですが,消化管症状と味覚異常が多くみられるようです.なお,この他に耐性菌(特にクラリスロマイシン)と除菌治療後の逆流性食道炎の発生(Gastroenterology 112:1442,1977)が問題となっています.ことに逆流性食道炎は前癌状態と考えられるバレット食道の原因となるため,慎重な経過観察の必要があると考えられます.

表 国内におけるピロリ菌除菌療法の副作用 ( 頻度順 )

副作用

発現頻度

下痢・軟便

6.5 %

舌炎・味覚異常

3.8 %

皮疹

3.3 %

その他

1.6 %

(Aliment Pharmacol Ther 13:741,1999)

初期治療が無効であった場合,従来は同一薬剤での再除菌が認められていましたが,その除菌率は高いものではありませんでした.2007年8月になり,再治療に限りメトロニダゾールの使用が認められるようになりました. メトロニダゾール内服中は,飲酒により腹痛,嘔吐,ほてり等画出現することがあちため,禁酒が必要です.また,ワーファリンの作用を増強するため,出血に注意する必要があります.

日本でのピロリ菌二次除菌療法

種類 1日量 期間
オメプラゾール / ラベプラゾール / ランソプラゾール 40 mg / 20mg / 60 mg ( x2 ) 1週間
アモキシシリン 1500 mg ( x2 ) 1週間
メトロニダゾール 500mg  ( x2 ) 1週間

 

 胃潰瘍の治療

厚生科学研究費により「科学的根拠に基づいた胃潰瘍診療」のガイドラインが作成されました.このガイドラインでもピロリ菌の除菌が優先されています.

 

図 胃潰瘍治療のフローチャート

 

  プロバイオテクス

除菌率はラクトフェリン付加群でコントロール群に比べ86.6% vs 74.4%と向上がみられ,有害事象は9.1% vs 16.3%と軽減がみられています(Helicobacter 14:119,2009).

  治療の問題点

除菌不成功例

再除菌が失敗した場合に関しては,現在の保険適応では 他の治療法の選択は残されていません.このため,異なった薬剤の使用許可が待たれます.

除菌療法後の抗潰瘍薬の使用

除菌療法だけでは潰瘍が治癒しない症例も存在するため (Aliment Pharmacol Ther 12:433,1998),除菌療法期間を含めた8週間の胃酸分泌抑制薬の投与が望ましいと思われます.

NSAIDsとの関係

NSAIDsとピロリ菌は相互作用があり(Lancet 359:14,2002),NSAIDsの長期投与が予定されている潰瘍既往者では除菌が推奨されています(Lancet 359:9,2002)が,NSAIDs服用中の除菌に対しては結論が出ていません. 低用量アスピリンによる消化性潰瘍を対象としたPPIを併用した二重盲検法の結果,継続群では中止群に比して,潰瘍出血率は高かったものの(10.3% vs 5.4%),全死亡率(1.3% vs 12.9)は低いことが報告されています(Ann Int Med 152:1,2010).

Barrett食道癌との関係

除菌後の逆流性食道炎発生リスクを示唆する報告(J Gastroenterol 44:518,2009)と,否定的な報告(Am J Gastroenterol 105:1007,2010)があり,Barrett食道癌との関連については,いまだ結論が出ていません.

 

U.胃炎について

急性胃炎について

 

慢性胃炎について

分類

Schindlerの分類(1947)

Idiopathic:superficial

                   atrophic - hyperplastic
                   hypertrophic:interstitial
                                          glandular
                                          proliferative
accompanying other gastric pathology:tumor
                                                           gastroduodenal ulcer
                                                           in the postoperative stomach

 

Sydney分類(1990)

Sydney分類は1990年にシドニーで開催された世界消化器病会議で提唱された胃炎の分類法で,組織学的所見を重んじ,成因も考慮した点に特徴があります(Am J Surg Pathol. 20(10):1161-81,1996).組織学的部門と内視鏡的部門が併記され,組織学的部門は成因(aetiology),胃炎の広がり(topography),形態学(morphology)の3部門より構成されます.

シドニー分類

診断

pepsinogen

pepsinは胃液中に存在するタンパク質分解酵素で酸性の環境で作用します.その前駆体がpepsinogenですが,1型と2型の2種類あります.pepsinogen1は胃底腺領域で産生され,pepsinogen2は胃粘膜全域で産生されます.

pepsinogen1     pepsinogen2

胃粘膜が萎縮するに伴いpepsinogen1およびpepsinogen比(pepsinogen1/pepsinogen2)は低下します.一方,胃粘膜の萎縮と胃癌との相関がみられるため,pepsinogenが胃癌のスクリーニンに使用可能か否かが厚生労働省がん助成金による研究班で検討されました.その結果pepsinogen1が70ug/lかつpepsinogen比が3.0以下を基準とした場合,12年間の経過観察中,陽性者からの胃癌発生率は4.06 %,陰性者からの胃癌発生率は0.59 %であり,陽性者の相対危険度は陰性者の6.9倍でした(「血清ペプシノゲン値による胃がんスクリーニングに関する研究」班研究報告書).内視鏡とpepsinogenを同時に5113名に施行した報告ではsensitivity 84.6 %, specificity 73.5 % でした( GUT 44:693,1999 ).また,pepsinogen陽性者は胃癌の発生率が高いと報告されています( GUT 764:,2005 ).

ABC分類

血清ピロリ菌抗体と血清ペプシノーゲン法との併用による胃癌リスクの評価法です.A<B<C<Dの順で胃癌リスクの上昇がみられます(Int J Cancer 109:138,2004).ピロリ菌除菌成功後はE群として扱われます.

 ABC分類の判定表

  ピロリ菌抗体
陰性 陽性
血清ペプシノーゲン検査 陰性 A B
陽性 D C
 

胃癌の年間発生率

 

A

B

C

D

胃癌年間発生率

0.04%

0.06%

0.35%

0.60%

 

III.胃潰瘍について

胃潰瘍の原因について

ピロリ菌

ピロリ菌との関係についてはピロリ菌と胃の疾患との関係についてを参照してください.

 

診断について

胃透視

胃内視鏡検査

 

治療について

内視鏡的止血術

クリップ止血法

純エタノール局注法

露出血管周囲に0.1-0.2ml×3-4箇所 + 血管断端に0.1-0.2ml(2mlまで使用可能)

HSE(高張ナトリウム-エピネフリン)局注法

エピネフリンによる血管収縮作用と高張食塩水の物理化学的組織膨化と血栓形成作用

5%HSE:5%NaCl(20ml) + 0.1%エピネフリン(1ml)

10%HSE:10%NaCl(20ml) + 0.1%エピネフリン(1ml)

露出血管周囲に1-2ml×3-4箇所(5%HSEは30ml,10%HSEは10mlまで使用可能)

ヒートプローブ法

25Jまたは30J×10回

アルゴンプラズマ凝固法

アルゴンガス流量:1.5-2.0L/分

出力:50-60W

内服治療

 

IV.胃癌について

胃癌の原因について

ピロリ菌

ピロリ菌との関係についてはピロリ菌と胃の疾患との関係についてを参照してください.

Epstein-Barr virus ( EBV ) 

ピロリ菌以外には, 胃癌症例の1割に腫瘍細胞核におけるEpstein-Barr virus ( EBV ) の存在が報告され, EBVと胃癌との関係が注目されています.

 

診断について

胃透視

胃内視鏡検査

病期分類

胃癌取扱い規約(第14版)

 胃癌取扱い規約(第14版)

  N0 N1 N2 N3
T1 IA IB II IV
T2 IB II IIIA IV
T3 II IIIA IIIB IV
T4 IIIA IIIB IV IV
M1 IV IV IV IV
原発腫瘍
T1a 粘膜にとどまる(M)
T1b 粘膜下組織にとどまる(SM)
T2 固有筋層に とどまる(MP)
T3 漿膜下組織にとどまる(SS)
T4a 漿膜面に接するか露出(SE)
T4b 他臓器におよぶ(SI)
リンパ節 N0 転移リンパ節が0個
N1 転移リンパ節が1-2個
N2 転移リンパ節が3-6個
N3 転移リンパ節が7個以上
転移 M0 遠隔転移なし
M1 遠隔転移あり

組織分類

AJCC の分類

G1:Well differentiated
G2:Moderate differentiated
G3:Poorly differentiated
G4:Undifferentiated

癌取り扱い規約の分類

Papillary adenocarcinoma(pap)
Well differentiated tubular adenocarcinoma(tub 1)
Moderately differentiated tubular adenocarcinoma(tub 2)
Poorly differentiated solid adenocarcinoma(por 1)
Poorly differentiated non-solid adenocarcinoma(por 2)
Signet-ring cell carcinoma(sig)
Mucinous adenocarcinoma(muc)

治療について

内視鏡的治療

手術

化学療法

第一世代

mitomycin C(MMC)

5-FU

tegafur

adriamycin(ADM)

第二世代

UFT

5-FU+MTX(metho-trexate)

5-FU+LV(leucovorin)

CDDP(cisplatin)

第三世代

TS-1

CPT-11(irinotecan)

TXL(taxisol),TXT(taxotere)

分子標的モノクローナル抗体

bevacizumab(抗vascular endothelial growth factor 抗体),ramucirumab(抗vascular endothelial growth factor receptor-2抗体)cetuximab(抗epidermal growth factor receptor 抗体),trastuzumab(抗Human Epidermal Growth Factor Receptor Type 2抗体),nivolumab(抗Human Programmed Cell Death 1抗体)などが検討されています.

胃癌の化学療法

  一次化学療法

HER2陰性 S-1 + CDDP (A)*
Capecitabine + CDDP (A)*
S-1 + Oxaliplatin (B)**
Capecitabine+ Oxaliplatin (B)**
FOLFOX (B)**
HER2陽性 Capecitabine + CDDP + Trastuzumab
S-1 + CDDP + Trastuzumab (B)**
二次化学療法

Paclitaxel 毎週投与 + Ramucirumab (A)*

三次化学療法

Nivolumab (A)*

Irinotecan (B)**

 (A)*:エビデンスレベル A, (B)**:エビデンスレベル B

 

疼痛の対策

強力オピオイド

 

モルヒネ換算比

経口

座薬

注射

硬膜外

1 1.5 2 10-15

注:フェンタニルとモルヒネの力価 =10:1

嘔気・嘔吐の対策

ステロイド

消化管の浮腫軽減,食欲不振や倦怠感等の自覚症状改善のためにデキサメサゾン(デカドロン)またはリン酸ベタメタゾン(リンデロン)1-2mg/日を投与します.

ソマトスタチン

消化液を減らす目的で持続性ソマトスタチンアナログ製剤(サンドスタチン)を300μg/日を持続皮下注します.

化学療法の嘔気に対する対策(J Clin Oncol 17:2971,1999)

Emetic Risk

Chemotherapy Agent

急性嘔吐 遅発性嘔吐
low Vinorelbine,fluorouracil,methotrexate,thioguanine,mercaptopurine,bleomycin,1-asparaginase,vindesine,vinblastine,vincristine,busulphan,chlorambucil ,melphalan,hydroxyurea,fludarabine,2-chlorodeoxyadenosine,tamoxifen No routine pretreatment antiemetics No regular preventive use of antiemetics for delayed emesis
Intermediate Irinotecan,mitoxantrone,paclitaxel,docetaxel,mitomycin,topotecan,gemcitabine,etoposide,teniposide Pretreatment: a corticosteroid (such as dexamethasone 4-8 mg by mouth, given once before chemotherapy) No regular preventive use of antiemetics for delayed emesis
High Dacarbazine,actinomycin-D,mechlorethamine,streptozotocin,hexamethylmelamine,carboplatin,cyclophosphamide,lomustine,carmustine,daunorubicin,doxorubicin,epirubicini,darubicin,cytarabine, ifosfamide Pretreatment: 5-HT3 Antagonist plus a corticosteroid Dexamethasone 8 mg twice daily for 2-3 days +
Metoclopramide 30-40 mg, two to four times per day for 2-4 days,
or
5-HT3 antagonists for 2-3 days
High Cisplatin Pretreatment: 5-HT3 Antagonist plus a corticosteroid Dexamethasone 8 mg twice daily for 3-4 days+
Metoclopramide 30-40 mg, two to four times per day for 2-4 days,
or
5-HT3 antagonists for 2-3 days